民藝誕生から100年——ANATOMICA京都 スペシャルイベント
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1923年の関東大震災で被災した柳宗悦は、翌年に京都へ移り住みました。
そして河井寛次郎、濱田庄司との交遊を通じて、1925年12月——
「民衆の暮らしの中から生まれた美=民藝」 という新しい価値観が、ここ京都で誕生したと言われています。
今年は、その「民藝」という言葉が生まれてちょうど100年。
ANATOMICA京都では、その節目に敬意を込め、年内最後の特別なイベントを開催します。
青森で民藝の礎を築いた相馬貞三

戦前から戦後にかけて、青森で民藝運動を牽引したのが 相馬貞三(1908–1989) です。
柳宗悦の思想に強く共鳴し、時には行動を共にした彼は、同郷の棟方志功らとともに1942年に日本民藝協会青森支部を設立。
1953年には「つがる工芸店」の前身となる 朝書房 を開業しました。
相馬が特に力を注いだのが、地元青森に根ざした手仕事——
山葡萄細工とあけび蔓細工 です。
元は山仕事の背負い籠として使われていたものに、
“使い込むほど色艶が深まり、美しさが増す” という素材の魅力を見出し、
職人を指導、育成し、生活道具としての買い物かごへ発展させ、全国へ広めました。
今日まで続く青森の編み籠文化。その基盤を築いたのが相馬貞三の偉大な功績です。
相馬を支えた、青森の名工房——宮本工芸

相馬の活動を大きく支えた工房の一つが 宮本工芸(1949年創業)
今回のイベントでは、この宮本工芸さんによる
あけび蔓・山葡萄細工の籠や手提げの受注会 を開催いたします。
柳宗悦により美を見出された、民藝の編粗品(へんそひん)
編粗品とは、樹皮や蔓植物を編んで形作った生活道具のこと。
柳宗悦が唱えた民藝の編粗品の条件は次のようなものでした。
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造形的な美しさ、力強さをもつものであること
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丁寧かつまじめにつくられたものであること
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素材、かたち、技術において土地の暮らしに根ざした地域性をそなえていること
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使いやすさ、耐久性を考慮し、よく吟味した素材を用いること
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実用的な、用に即したつくり、かたちであること
- なるべく廉価であること
宮本工芸のかごは、まさにこれらの条件を体現する“暮らしの民藝”です。
青森の大自然が育む、唯一無二の素材
青森県産の山葡萄蔓の皮、あけび蔓は、岩木山の豊かな自然の中で育ちます。
山葡萄蔓の皮に関しては採取できるのは 毎年わずか4週間ほど(6月下旬〜7月下旬)
近年、環境の変化と共に皮が減ってきていると言われております。
またあけび蔓についても同様、昔は岩木山はあけび山と云われるほど豊富でしたが、現在は最盛期の1割程度と、とても大切な自然の恵みです。
使うほど深い飴色へと変化し、“育てる楽しみ” を味わえるのも魅力です。
100年の民藝に触れる、特別な機会
柳宗悦が提唱した「民衆の美」は、100年を経てもなお私たちの暮らしに温もりと価値をもたらします。
今回の受注会は、そんな民藝の精神を現代に伝える貴重な機会です。
ぜひ、この機会に本物の手仕事に触れ、その魅力を感じてみてください。

ANATOMICA KYOTO
山内